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夫はジャーナリスト、妻は出版社勤めという夫妻が、溢れんばかりの蔵書に頭を悩ませ、新築を決意した。
はじめは、より広い土地を探し求めたが、職業柄「帰るところ」として、もともと住んでいた多摩丘陵に特別な愛着をもっていた二人は、同じ土地に建て替えをすることにした。このあたりの宅地は古く、美しい緑の庭を持つ家々が並ぶ。石垣の積まれた擁壁、赤味がかった屋根がこのエリアの特徴である。こうした環境と、自然で健康によい建築材料を追求したこと、そして夫人のアジア的なものへの憧憬と目尻に笑みを浮かべるいたずらっぽい感覚(岡本太郎のような)、がこの家の特色となっている。
赤い屋根、赤味がかった窓枠、多く配されたフロストガラス、そして手で塗られた趣を残す外壁が、通りがかる人に「懐かしさ」を呼び起こさせる。付近の石垣に使われている玉石を用いた石畳の駐車スペース、もとからあった石灯籠もこれに貢献している。
玄関まわりは休息の領域であり、同時に近隣とつながる部分でもある。入口の脇にしつらえられた縁側は、このスペースをなかば公の空間として、住居にコミュニティーの活気を吹き込む。
機能的な書架に一万冊以上の本を収蔵する地下室。その上に1、2階が重ねられる。蔵書を基盤とする建物の構成は、夫妻の生活、人生そのものをかたちに現している。
2階は屋根の上に暮らすような感覚である。大きな木のテーブル、ステンレス製のキッチン。ゆとりのある空間に空が呼び込まれる。なんとなくアトリエのような雰囲気である。壁に穿たれた穴は寝間につながる。絵のような窓からは、四季折々の彩りが室内に溢れる。
歩き回る空間は持たないが、時を過ごす時空間のある家。季節ごとの空気、時間を追って刻々と変化する光、外部の環境がそのまま室内の時空間を決定付ける。四次元的に大きな広がりをもつ、小さな家である。
作品名 | ARI |
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所在地 | Machida, Tokyo 東京都 町田市 |
設計 | Andrea Held(Hikone), Kentaro Yamashita 彦根 アンドレア、 山下 健太郎 |
構造設計 | Toru Yamazaki 山崎亨構造設計事務所 |
施工 | Watanabe Giken 渡邊技建 |
階数 | Basement and 2stories 地下1階・地上2階 |
敷地面積 | 82.6㎡ |
建築面積 | 32.92㎡ |
延床面積 | 97.17㎡ |
設計期間 | 2000.02 - 2000.11 |
工事期間 | 2000.11 - 2001.04 |
竣工 | 2001.4 |
撮影 | Nobuaki Nakagawa 中川 敦玲 |